題材とねらいの明確化

音楽科における「題材」と「ねらいの明確化」(岐阜県教育課程講習会での説明資料)
■音楽科は「教材を教える」教科ではない。生涯にわたって音楽に親しみ,自らの生活を明るく豊 かなものにするための基礎・基本を「教材を学ぶことを通して教える」教科である。
○その基礎・基本は音楽的な要素にかかわるもので学習指導要領に示されている。
音楽科では「題材」としてつけたい力の要素を示し,そこに複数の教材を位置付けている。
○楽曲の味わいは「すべての音楽的要素」がかかわり合って醸し出されている。

・音楽的要素

音楽を構成する要素……リズム・旋律・和声・形式・フレーズ・歌詞など
音楽を表現する要素……強弱・速度・音色(響き)・発音・アーティキュレーションなど

○ つけたい力を明確にもたないと「あれもこれもトータルで教える」ことになり,基礎・基本の 確実な定着には結び付いていかない。それぞれの内容について6年間・9年間の指導の系統を明 確にし,段階的に指導を積み重ねていく必要がある。

■つけたい力によって同じ曲でも指導する内容は大きく変わってくる~「もみじ」を例に。

《感動を大切にした導入》
音楽教育としては「教材で教える」が, その「学ぶエネルギー」は曲そのものが もつ美しさや味わいへの感動である。そ れを自らのものとして再表現したり創造 したりしていくのである。

《要素にスポットを当てる》
つけたい力としてスポットを当てた音楽 的要素に自然につないでいく教師の指導性の発揮が重要である。

※言い換えれば,教材選択が大きな意味 をもつ。その曲の美しさに直結する要素が「題材でつけたい力」と一致して いなければ教材としての意味がない。

「題材」と「本時のねらい」
◎「もみじ」をどんな題材で扱うかは,曲のどの部分にスポットを当てた指導をするかに直結す る。つまり,それによって指導する内容がまったく変わってくる,ということである。

◎本時のねらいの表記としては,「どの部分について」「どんな要素の何をどのようにできるよ うにすることで」「どんな美しさや味わいを表現するか(鑑賞:感じられるようにするか)と すると,授業が具体的にイメージできるとともに,自分の中で指導内容が明確にできる。

【歌詞の内容を生かした表現】 ※イメージ:美しい情景を美しい発音で表現
歌詞に使われている言葉について,「あき」「ゆうひ」など曲のイメージに直結する言葉を 母音の口形を意識した明確な発音で表現することにより,美しい歌詞を旋律にのせてうたう ことができる。

【フレーズのまとまり】 ※イメージ:どちらを見渡しても美しい紅葉が続いている
曲全体のまとまりについて,2小節単位の動機をつなぐことの大切さを感じ取り,それぞれ の最後の音の長さを保ち,次の音へ気持ちをつないだブレスをすることにより,歌詞の内容 に調和した全体の大きな流れを感じて表現することができる。

【旋律の対位的な重なり】 ※イメージ:ひらひらと交互に舞う落ち葉
2つのパートが交互に表現する前半部分において,二分音符で音を伸ばしている部分や四分 休符の部分で相手の旋律を聴いて次の1拍目をそろえることにより,互いの旋律を調和さ せ,落ち葉が美しく舞う雰囲気を表現することができる。

【旋律の和声的な重なり】 ※イメージ:美しく重なり合う落ち葉,紅葉と緑や青空の調和など
二声が同時進行する後半部分において,第2フレーズ最後のユニゾンから第3フレーズ冒頭 の3度への広がりと響きを感じ取り,補助によって正しく表現できるようにするとともに, 同じ和音が3回現れることを意識した練習で3度の響きを定着させることにより,重なり合 った(秋の○○の)美しさを表現することができる。

※ほかにも「美しい声の響き」など着目する要素によってさまざまな内容が考えられる。