指導計画作成の前に

1 基礎的・基本的内容とは

学習指導要領に示されている指導内容が「基礎的・基本的内容」です。その指導内容を児童生徒が自分のものとして身に付けていくための指導・援助をするのが,私たちです。

2 年間指導計画の作成

基礎的・基本的内容を系統的,発展的に身に付けさせるために,年間指導計画を作成します。この指導計画の作成に当たっては,学習指導要領に示された各学年の内容と題材とのマトリクスを作成することにより,全ての内容を網羅することについて確認するとともに,同じ内容にかかわる複数の題材について,その系統を考えたり確認したりすることができます。

3 題材の指導目標の設定

この指導目標は,その題材の学習活動を通して児童生徒一人一人が身に付けてほしい音楽的指導内容を分析し,明確にしたものです。当然,前記のように「どの題材のどんな学習をふまえて」「つぎのどんな題材につながっていくか」を考えなければなりません。それによって,基礎的・基本的内容の学習が積み重なり,生きて働く力として身に付いてきます。

4 題材でつけたい力(評価規準)の設定

指導目標,つまり「身に付けたい音楽的指導内容」を,観点別学習状況の4つの評価の観点からとらえたもの,それが「つけたい力」です。「指導と評価の一体化」ということから考えると,これは「評価規準」になります。
ここで注意しなければならないことは,最初と同じで「教材を教えるだけ」にならないようにすることです。年間指導計画のマトリクスに立ち戻り,この教材ではどんな指導内容に重点をおくのかを確かめる必要があります。
※評価規準
様々な学習活動を通して変容していく児童生徒一人一人の姿や学習状況について,題材のねらい に応じて「おおむね満足できる」状況の内容を示したものです。こういう姿になってほしいと いう具体的な児童生徒の姿で示します。それを求めて教師が1時間1時間のねらいをもち,つけた い力を考えて授業を仕組んでいきます。
※4つの評価の観点


  1. 「音楽への関心・意欲・態度」(音楽に親しみ,音楽を意欲的,主体的に表現し,鑑賞しようとする。)
  2. 「音楽的な感受や表現の工夫」(音楽のよさや美しさを感じ取り,創造的に表現を工夫している。)
  3. 「表現の技能」(音楽を創造的に表現するために必要な技能を身に付けている。)
  4. 「鑑賞の能力」(音楽を幅広く聴取し,鑑賞し,そのよさや美しさを味わう。)

5 題材指導計画への位置付け

前記の,4観点から明確にした題材でつけたい力を,計画した時間の中で意図的・計画的に指導し,評価していかなければなりません。どの時間には,どんな内容について,どんな場で,どのように指導し評価するのかを明確にする必要があります。
どんな内容」については,評価規準にしたがい,この時間はこういう項目で見ていくという内容を「評価項目」として位置付けます。そして,どんな方法によって評価していくかをはっきりさせます。
評価の方法には,観察によるもの,演奏発表や作品発表によるもの,学習プリント等によるもの,実技検査やテストによるもの,対話・会話によるものなどが考えられます。
なお,1時間にいくつもの評価項目を設定するのではなく,単位時間のねらいに応じて1つか2つの内容に焦点化して見つめていくことが大切です。

6 指導案では・・・・

その時間の評価項目について,どんな場で,どのように見つめていくのかを明らかにします。指導案では,「評価項目と方法」のような内容の項をおこしてみると,より明確になって来るでしょう。
※大切なことは,欲張りすぎない,全部をやろうとしないということでしょう。
すべての音楽的な要素が絡みあって一つの集合体となっている音楽です。いつも トータルで考えると,
・「あれもダメ,これもダメ」的な,ダメダメ指導に陥りがちになります。
・「曲の盛り上がりを工夫しよう」的な,画一的な指導に陥りがちになります。
・「○○くんが,前の時間よりすごく頑張っていたね。」「みんな,一生懸命頑張っ たね」的な精神論的な指導に陥りがちになります。
この題材ではこの内容に重点をかけよう,というものをはっきりさせて指導に当たるのです。時には「本時のつけたい力は思考力,判断力だ」ということもあるでしょう。「主体的な学習を意図した,パート練習の仕方についてのみの場合もあるでしょう。音楽だから技能面だけであるとは言えません。
また,技能面でも,発声には目を(耳を)つむり,フレーズの流れについて重点的に見つめていく時間も当然出てきます。そうでないと,特に気になりがちな発声などについては,常に指摘され続ける,そんな指導へ(ダメダメ指導へ)結びついていってしまいます。
ただしこれらは,あくまでも意図的・計画的に進められることが必要です。